問題
(1) 自然数 n=1,2,3,⋯ に対して,ある多項式 pn(x),qn(x) が存在して,
sinnθ=pn(tanθ)cosnθ,cosnθ=qn(tanθ)cosnθ
と書けることを示せ。
(2) このとき,n>1 ならば次の等式が成立することを証明せよ。
pn′(x)=nqn−1(x),qn′(x)=−npn−1(x)
出典:東京大学 1991年度 前期日程 第2次学力試験 理系 第4問
解答
(1)
虚数単位を i とする。x の式 (1+ix)n を展開すると、二項定理により x の多項式になる。その実部を qn(x)、虚部を pn(x) と定める。すなわち qn(x)+ipn(x)=(1+ix)n である。 x=tanθ とおくと cosθ+isinθ=(1+itanθ)cosθ である。両辺を n 乗して cosnθ+isinnθ=(1+itanθ)ncosnθ を得る。右辺は定義より {qn(tanθ)+ipn(tanθ)}cosnθ である。実部と虚部を比較して
cosnθ=qn(tanθ)cosnθ,sinnθ=pn(tanθ)cosnθ
である。したがって、求める多項式 pn(x),qn(x) は存在する。
(2)
(1)で定めた恒等式 qn(x)+ipn(x)=(1+ix)n を x で微分する。すると qn′(x)+ipn′(x)=ni(1+ix)n−1 である。さらに (1+ix)n−1=qn−1(x)+ipn−1(x) だから
ni(1+ix)n−1=ni{qn−1(x)+ipn−1(x)}=−npn−1(x)+inqn−1(x)
である。実部と虚部を比較して qn′(x)=−npn−1(x),pn′(x)=nqn−1(x) を得る。すなわち pn′(x)=nqn−1(x),qn′(x)=−npn−1(x) である。
別解。複素数を使わず、加法定理だけでも構成できる。n=1 では p1(x)=x,q1(x)=1 とすれば sinθ=xcosθ,cosθ=1⋅cosθ である。
ある n で
sinnθ=pn(x)cosnθ,cosnθ=qn(x)cosnθ,x=tanθ
と書けているとする。加法定理より sin(n+1)θ=sinnθcosθ+cosnθsinθ であるから sin(n+1)θ={pn(x)+xqn(x)}cosn+1θ である。また cos(n+1)θ=cosnθcosθ−sinnθsinθ より cos(n+1)θ={qn(x)−xpn(x)}cosn+1θ である。したがって pn+1(x)=pn(x)+xqn(x),qn+1(x)=qn(x)−xpn(x) とおけばよいので、(1)は帰納法でも示せる。
さらにこの漸化式から(2)も帰納法で出せる。まず p2(x)=2x,q2(x)=1−x2 であるから p2′(x)=2=2q1(x),q2′(x)=−2x=−2p1(x) が成り立つ。ある n≧2 で pn′(x)=nqn−1(x),qn′(x)=−npn−1(x) が成り立つとする。すると pn+1′(x)=pn′(x)+qn(x)+xqn′(x)=nqn−1(x)+qn(x)−nxpn−1(x) である。ここで qn(x)=qn−1(x)−xpn−1(x) だから pn+1′(x)=(n+1)qn(x) となる。同様に qn+1′(x)=qn′(x)−pn(x)−xpn′(x)=−npn−1(x)−pn(x)−nxqn−1(x) であり、pn(x)=pn−1(x)+xqn−1(x) を使うと qn+1′(x)=−(n+1)pn(x) である。よって(2)も示された。