問題
平面上の2点P,Qの距離をd(P,Q)と表すことにする。平面上に点Oを中心とする一辺の長さが1000の正三角形△A1A2A3がある。% 図は省略△A1A2A3の内部に3点B1,B2,B3を,d(An,Bn)=1 (n=1,2,3)となるようにとる。また,
a1=A1A2,a2=A2A3,a3=A3A1
e1=A1B1,e2=A2B2,e3=A3B3
とおく。n=1,2,3のそれぞれに対して,時刻0にAnを出発し,enの向きに速さ1で直進する点を考え,時刻tにおけるその位置をPn(t)と表すことにする。
(1) ある時刻tでd(P1(t),P2(t))≦1が成立した。ベクトルe1−e2と,ベクトルa1とのなす角度をθとおく。このとき∣sinθ∣≦10001となることを示せ。
(2) 角度θ1,θ2,θ3をθ1=∠B1A1A2,θ2=∠B2A2A3,θ3=∠B3A3A1によって定義する。αを0<α<2πかつsinα=10001をみたす実数とする。(1)と同じ仮定のもとで,θ1+θ2の値のとる範囲をαを用いて表せ。
(3) 時刻t1,t2,t3のそれぞれにおいて,次が成立した。
d(P2(t1),P3(t1))≦1,d(P3(t2),P1(t2))≦1,d(P1(t3),P2(t3))≦1
このとき,時刻T=31000において同時に
d(P1(T),O)≦3,d(P2(T),O)≦3,d(P3(T),O)≦3
が成立することを示せ。
出典:東京大学 2009年度 前期日程 第2次学力試験 理系 第6問
解答
(1)
時刻tにおいて
A1P1(t)=te1,A2P2(t)=te2
である。したがって
P1(t)P2(t)=P1(t)A1+A1A2+A2P2(t)=−te1+a1+te2=a1−t(e1−e2)
である。
ある時刻tでd(P1(t),P2(t))≦1が成り立つなら,ベクトルa1の先端は,e1−e2の方向に引いた直線から距離1以下のところにある。したがって,a1からその直線までの垂直距離は1以下である。
∣a1∣=1000であり,e1−e2とa1のなす角をθとすると,この垂直距離は 1000∣sinθ∣ である。よって 1000∣sinθ∣≦1 となり,∣sinθ∣≦10001 が示された。
(2)
a1の向きを角度0の方向として測る。B1,B2はいずれも正三角形の内部にあるので 0<θ1<3π,0<θ2<3π である。e1の方向角はθ1であり,a2の方向はa1から2π/3だけ回転した向きなので,e2の方向角は 32π+θ2 である。
一般に,方向角がu,vである2つの単位ベクトルの差を考えると
(cosu,sinu)−(cosv,sinv)=2sin2v−u(sin2u+v,−cos2u+v)
である。ここではv−uは0とπの間にあるので,差のベクトルの方向角は 2u+v−2π である。u=θ1,v=2π/3+heta2を代入すると,e1−e2の方向角は 2θ1+θ2−6π である。
(1)より,この角をϕとおけば ∣sinϕ∣≦10001=sinα である。また −6π<ϕ<6π であるから,∣sinϕ∣≦sinαより ∣ϕ∣≦α である。したがって −α≦2θ1+θ2−6π≦α となる。両辺を2倍して
3π−2α≦θ1+heta2≦3π+2α
である。
(3)
与えられた3つの接近条件に(2)をそれぞれ適用する。組(P1,P2)から 3π−2α≦θ1+heta2≦3π+2α を得る。同様に,組(P2,P3),組(P3,P1)から 3π−2α≦θ2+heta3≦3π+2α および 3π−2α≦θ3+heta1≦3π+2α を得る。
これら3つの不等式を加えると π−6α≦2(θ1+heta2+heta3)≦π+6α であるから
2π−3α≦θ1+heta2+heta3≦2π+3α
となる。例えば θ1=(θ1+heta2+heta3)−(heta2+heta3) なので,上の評価とθ2+heta3の評価を組み合わせると 6π−5α≦θ1≦6π+5α である。同様に
θ2−6π≦5α,θ3−6π≦5α
も成り立つ。
正三角形の中心Oは,各頂点の角の二等分線上にある。したがって,AiからOへ向かう方向は,辺の方向から角度π/6だけ内側へ傾いた向きである。また一辺が1000の正三角形の外接円半径は AiO=31000=T である。
時刻Tにおいて,Pi(T)はAiからeiの向きに長さTだけ進んだ点である。一方,OはAiから中心方向に長さTだけ進んだ点である。これら2つの方向のなす角は高々5αなので,二等辺三角形の弦の長さより d(Pi(T),O)≦2Tsin25α である。
ここで0<α<π/2かつsinα=1/1000である。正の角についてsin(u+v)<sinu+sinvを用いれば sin25α<25sinα=4001 である。よって
d(Pi(T),O)<2⋅31000⋅4001=35<3
となる。これはi=1,2,3のすべてで成り立つので
d(P1(T),O)≦3,d(P2(T),O)≦3,d(P3(T),O)≦3
が同時に成り立つ。